2009年2月10日火曜日

読書記録:遠い日の戦争

自分にとって小説と言ったら、迷わず吉村昭である。ここ数年この人以外には読んだことはない。先日、彼の題材の中では珍しく現在の話を読んで、随分と落胆したことがあったので、今回は戦争小説である。やはり、彼にはこれが一番あっている。
題材は戦争犯罪であるが、ここで描かれている正義というものが、ずっと頭のなかで渦巻いているが、最後の解説を読んですっきりとした理解が出来た。つまり、正義とは絶対的ものではなく、あくまで時代の認識に過ぎないということだ。
戦争という特別な状況下では、平時の常識は通用せず、大量殺人が英雄になってしまうことになる。それも軍人だけではなく国民全体がその大きな流れの中で巻き込まれ、何かを守るためと言いながら、非常に矛盾に満ちた状況に突き進んでしまうのだ。
そういうものなのかもしれない。

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